交通事故や不倫、離婚、暴力などのニュースでよく耳にする「損害賠償」と「慰謝料」。
似たような意味で使われるため、
「損害賠償と慰謝料は何が違うの?」
「慰謝料とは別に損害賠償ももらえる?」
「精神的な苦痛に対して払われるのはどっち?」
と疑問に思ったことがある人も多いのではないでしょうか。
結論からいうと、慰謝料は損害賠償の一種です。
大まかな関係は、
損害賠償 > 慰謝料
と考えるとわかりやすいでしょう。
損害賠償は、相手の行為によって生じたさまざまな損害を金銭などで償うこと。
そのうち、**精神的な苦痛に対して支払われるお金が「慰謝料」**です。
この記事では、損害賠償と慰謝料の違いや、交通事故・不倫・離婚などの具体例をわかりやすく解説します。
損害賠償と慰謝料の違いを簡単にいうと?
まずは違いを簡単に整理してみましょう。
| 比較 | 損害賠償 | 慰謝料 |
|---|---|---|
| 意味 | 生じた損害を償うこと | 精神的苦痛を金銭で償うこと |
| 対象 | 財産的損害・精神的損害など | 主に精神的損害 |
| 具体例 | 治療費、修理費、休業損害、慰謝料など | 事故による苦痛、不倫による精神的苦痛など |
| 関係 | 大きな概念 | 損害賠償の一種 |
つまり、
損害賠償という大きな箱の中に慰謝料が入っている
とイメージすると理解しやすいでしょう。
損害賠償とは?
損害賠償とは、簡単にいうと他人に与えた損害を埋め合わせることです。
たとえば、車を運転していて他人の車にぶつけてしまったとします。
相手の車の修理に30万円かかったのであれば、その修理費が損害の一つになります。
さらに相手がケガをして、
- 病院の治療費
- 通院の交通費
- 仕事を休んだことによる収入減少
- ケガによる精神的苦痛
などが発生することもあります。
こうした損害について、一定の要件のもとで金銭などによって償うのが損害賠償です。
慰謝料とは?
慰謝料とは、精神的な苦痛という損害に対して支払われる賠償金です。
たとえば交通事故で大きなケガをした場合、
「痛くてつらかった」
「長期間通院しなければならなかった」
「事故が原因で後遺障害が残った」
など、修理費や治療費だけでは表せない苦痛が生じることがあります。
こうした精神的損害を金銭的に評価して賠償するのが慰謝料です。
つまり、
慰謝料=精神的苦痛に対する損害賠償
と覚えておけばよいでしょう。
「損害賠償+慰謝料」と請求できる?
ここが少しややこしいポイントです。
日常会話では、
「損害賠償とは別に慰謝料を請求する」
という言い方をすることがあります。
しかし法律上の整理では、慰謝料そのものが損害賠償の一部です。
たとえば交通事故で、
- 治療費50万円
- 休業損害30万円
- 慰謝料80万円
が認められたとします。
この場合、
50万円+30万円+80万円=160万円
が損害賠償額になる、というイメージです。
したがって厳密には「損害賠償金と慰謝料という完全に別のお金がある」というわけではありません。
損害賠償にはどんなものが含まれる?
損害は、大きく「財産的損害」と「精神的損害」に分けて考えることができます。
財産的損害
実際にお金や財産について発生した損害です。
たとえば、
- 車や物の修理費
- 治療費
- 入院費
- 通院交通費
- 仕事を休んだことによる損害
- 将来得られたはずの収入に関する損害
などがあります。
交通事故では、仕事を休んで収入が減った場合の「休業損害」や、後遺障害などによって将来の収入が減少すると考えられる場合の「逸失利益」なども問題になります。
精神的損害
目に見える物や直接的な出費ではなく、精神的な苦痛について生じた損害です。
これを金銭によって償うものが、
慰謝料
です。
交通事故の場合はどう違う?
具体例を見ると非常にわかりやすくなります。
Aさんが交通事故に遭い、車が壊れてケガをしたとします。
この事故によって、
車の修理費:40万円
治療費:20万円
休業損害:10万円
精神的苦痛に対する慰謝料:30万円
が認められたと仮定しましょう。
この場合、合計100万円が損害賠償の対象になるイメージです。
その中の30万円が慰謝料です。
つまり、
損害賠償100万円の中に慰謝料30万円が含まれている
という関係になります。
※実際の賠償額は事故の状況や過失割合、治療期間などによって異なります。
不倫の場合は?
不倫(不貞行為)の場合も慰謝料という言葉がよく使われます。
配偶者の不貞行為によって精神的苦痛を受け、法律上の要件を満たす場合、その精神的損害について慰謝料を請求できることがあります。
この場合も法律的には、
不倫によって生じた精神的損害に対する損害賠償=慰謝料
という関係です。
ただし、不倫があれば必ず慰謝料を請求できるわけではありません。
婚姻関係の状況、不貞行為の有無など、個別の事情によって判断が変わります。
離婚の慰謝料とは?
「離婚したら慰謝料をもらえる」
と思われることがありますが、離婚したという事実だけで必ず慰謝料が発生するわけではありません。
たとえば、
- 不貞行為
- DV
- その他、婚姻関係を破綻させる原因となった違法な行為
などによって精神的苦痛を受けた場合に、慰謝料が問題になることがあります。
そのため、
離婚=必ず慰謝料
ではない点に注意しましょう。
物を壊された場合に慰謝料はもらえる?
たとえば他人にスマートフォンを壊された場合を考えてみましょう。
スマホの修理に5万円かかったのであれば、その修理費について損害賠償が問題になります。
一方で、
「お気に入りのスマホを壊されて精神的にショックだったから慰謝料50万円」
と主張すれば必ず認められるわけではありません。
一般的な物損では、財産的な損害が賠償されることで精神的な損害も回復されると考えられ、慰謝料が認められにくいケースがあります。
ただし、事案によって判断は異なります。
損害賠償は「罰金」とは違う
もう一つ混同されやすいのが「罰金」です。
損害賠償と罰金は目的が異なります。
損害賠償は、被害者に生じた損害を加害者側が償うもの。
一方、罰金は犯罪に対する刑罰として国に支払うお金です。
たとえば交通事故の内容によっては、
「被害者への損害賠償」
と
「刑事手続きにおける罰金」
が別々に問題になる可能性があります。
罰金を支払ったからといって、被害者への損害賠償責任が自動的になくなるわけではありません。
損害賠償と示談金の違いは?
「示談金」もニュースでよく聞く言葉です。
示談とは、当事者同士の話し合いによってトラブルを解決することをいいます。
その示談によって支払われる金銭が一般に「示談金」と呼ばれます。
示談金の中には、
- 治療費
- 休業損害
- 慰謝料
- その他の損害
などが含まれることがあります。
そのため、
慰謝料=示談金
とも限りません。
示談金は「示談によって最終的に支払う金額」という意味合いで使われることが多い言葉です。
損害賠償と慰謝料の金額はどうやって決まる?
損害賠償額は、基本的には実際に発生した損害や法律上認められる損害をもとに検討されます。
修理費や治療費であれば領収書などから比較的計算しやすいでしょう。
難しいのが慰謝料です。
精神的な苦痛には、
「悲しさ100万円」
「ショック50万円」
という値札が付いているわけではありません。
そのため、事件・事故の種類や程度、過去の裁判例などさまざまな事情をもとに判断されます。
交通事故では、慰謝料の算定に複数の基準が使われることもあります。
慰謝料はいくらでも請求できる?
「精神的にものすごく苦しかったから1000万円請求したい」
と考えることもあるかもしれません。
請求する金額と、最終的に相手が支払う義務を負う金額は別問題です。
当事者間で合意できなければ、裁判などで損害の内容や因果関係などが検討され、認められる金額が判断されることがあります。
そのため、
自分が希望した金額=必ず受け取れる金額
ではありません。
「精神的苦痛を受けた」と言えば慰謝料をもらえる?
これもよくある誤解です。
嫌な思いをしたり、腹が立ったりしたすべての出来事について慰謝料が認められるわけではありません。
慰謝料を請求するには、法的に損害賠償責任が認められるための要件を満たす必要があります。
単に、
「傷ついた」
「ムカついた」
「精神的につらかった」
というだけで必ず慰謝料が発生するわけではありません。
損害賠償・慰謝料・示談金・罰金の違い
混乱しやすい4つの言葉をまとめると、次のようになります。
| 言葉 | 簡単な意味 |
|---|---|
| 損害賠償 | 生じた損害を償うこと |
| 慰謝料 | 精神的損害に対する損害賠償 |
| 示談金 | 示談によって支払われる金銭 |
| 罰金 | 犯罪に対する刑罰として国に納める金銭 |
特に覚えておきたいのは、
「慰謝料は損害賠償の一種」
という点です。
損害賠償と慰謝料についてよくある疑問
Q. 損害賠償と慰謝料は別々にもらえる?
慰謝料は損害賠償の一部です。
ただし、治療費や休業損害などの財産的損害と、慰謝料という精神的損害がそれぞれ認められ、合計して賠償されることはあります。
Q. 慰謝料は精神的苦痛へのお金?
基本的にはそのように考えるとわかりやすいでしょう。
精神上の苦痛・損害を金銭によって償うものです。
Q. 損害賠償には慰謝料が必ず含まれる?
必ずではありません。
物の修理費だけが損害として認められるようなケースでは、慰謝料が含まれないこともあります。
Q. 損害賠償を請求されたら犯罪者になる?
損害賠償責任は民事上の問題として生じることがあり、請求されたからといって犯罪者になるわけではありません。
民事上の責任と刑事上の責任は別のものです。
Q. 慰謝料に相場はある?
交通事故、不貞行為、離婚、名誉毀損など、トラブルの種類によって考え方が異なります。
さらに個別の事情によっても金額は変わるため、一律に「慰謝料は○万円」と決まっているわけではありません。
まとめ
損害賠償と慰謝料の最大の違いは、損害賠償がさまざまな損害を償うための大きな概念なのに対し、慰謝料はその中でも精神的な損害を償うものという点です。
簡単にいうと、
損害賠償
├ 治療費
├ 修理費
├ 休業損害
├ 逸失利益など
└ 慰謝料(精神的損害)
というイメージです。
「損害賠償と慰謝料はどっちを請求するの?」と迷いやすいですが、両者は完全に別の制度ではありません。
慰謝料は損害賠償の一種と覚えておけば、ニュースなどで出てきたときにも違いを理解しやすくなるでしょう。
なお、実際に損害賠償や慰謝料を請求できるか、また金額がいくらになるかは個別の事情によって大きく異なります。実際のトラブルについて判断が必要な場合は、弁護士などの専門家に相談するのが安全です。


