起訴猶予と不起訴の違いとは?前科はつく?無罪との違いもわかりやすく解説

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事件のニュースを見ていると、

「○○容疑者を不起訴処分としました」

「起訴猶予になりました」

といった言葉を耳にすることがあります。

どちらも「裁判にならなかった」というイメージがありますが、

「起訴猶予と不起訴は何が違うの?」

「不起訴になったら無罪ということ?」

「起訴猶予だと前科がつく?」

「前歴は残るの?」

など、違いがよく分からない人も多いのではないでしょうか。

結論からいうと、「不起訴」は検察官が刑事裁判にかけないと判断する処分全体を指し、「起訴猶予」は不起訴処分になる理由の一つです。

つまり関係としては、

不起訴 > 起訴猶予

となります。

この記事では、起訴猶予と不起訴の違いや「嫌疑なし」「嫌疑不十分」との違い、前科・前歴はどうなるのかについてわかりやすく解説します。

起訴猶予と不起訴の違いを簡単にいうと?

まずは両者の違いを簡単に整理してみましょう。

比較 不起訴 起訴猶予
意味 検察官が起訴しない処分 不起訴となる理由の一つ
裁判 原則として刑事裁判にならない 原則として刑事裁判にならない
有罪判決 受けていない 受けていない
前科 つかない つかない
前歴 捜査対象になった記録等が残ることがある 同様に残ることがある
ポイント 不起訴処分の総称 犯罪の嫌疑があっても事情を考慮して起訴しない

最も重要なのは、

起訴猶予は不起訴処分の一種

という点です。

「起訴猶予」と「不起訴」が完全に別々の処分として並んでいるわけではありません。

そもそも「不起訴」とは?

不起訴とは、捜査を行った結果、検察官が被疑者を刑事裁判にかけるための起訴をしないと判断することです。

警察に逮捕されたからといって、必ず裁判を受けるわけではありません。

一般的には、

事件発生

警察などによる捜査

検察官へ送致

検察官が起訴するか判断

起訴 → 刑事裁判へ
不起訴 → 原則として刑事裁判には進まない

という流れになります。

日本では原則として、検察官が起訴することで刑事裁判が始まります。

不起訴になれば、その事件について裁判所で有罪・無罪を判断する手続きには通常進みません。

起訴猶予とは?

起訴猶予とは、犯罪の嫌疑がある場合でも、さまざまな事情を考慮して検察官が起訴しない処分です。

刑事訴訟法248条では、犯人の性格や年齢、境遇、犯罪の軽重や情状、犯罪後の状況などを考慮し、訴追する必要がないと判断した場合には起訴しないことができるとされています。

たとえば、

  • 比較的軽微な事件だった
  • 初犯だった
  • 被害が小さい
  • 被害弁償が行われた
  • 被害者との示談が成立した
  • 本人が反省している
  • 再犯の可能性が低いと判断された

などの事情が考慮されることがあります。

ただし、「示談したら必ず起訴猶予になる」「初犯なら必ず不起訴になる」と決まっているわけではありません。

事件ごとに検察官が判断します。

「不起訴=無罪」ではない

ここはニュースを見るうえで非常に重要です。

不起訴のニュースを見ると、

「不起訴になったのだから無罪だった」

と思う人もいるかもしれません。

しかし、法律上は「不起訴」と「無罪」は意味が違います。

無罪とは、刑事裁判が行われ、裁判所が有罪ではないと判断して無罪判決を言い渡すことです。

一方、不起訴の場合は、そもそも刑事裁判に進んでいません。

つまり、

不起訴=裁判で無罪が確定した

という意味ではありません。

逆に、不起訴になったという事実だけから「犯罪をした」と断定することもできません。

不起訴には複数の理由があるからです。

不起訴にはどんな種類がある?

不起訴になる理由として、特にニュースなどで知られているのが次の3つです。

1.嫌疑なし

「嫌疑なし」は、捜査の結果、被疑者が犯罪を行ったとは認められない場合などの不起訴処分です。

たとえば捜査によって、

「犯人は別の人物だった」

「犯罪行為そのものが確認できなかった」

といったことが明らかになるケースが考えられます。

2.嫌疑不十分

「嫌疑不十分」は、犯罪を行った疑いは残っているものの、起訴して有罪を立証するための証拠が十分ではない場合などに行われる不起訴処分です。

つまり、

「絶対にやっていないことが分かった」

という意味とは限りません。

証拠などを検討した結果、刑事裁判で有罪を立証するのが難しいと判断された場合などが該当します。

3.起訴猶予

起訴猶予は、犯罪の嫌疑が認められる場合でも、

「さまざまな事情を考慮すると、今回は起訴する必要まではない」

と検察官が判断するものです。

この違いを簡単に整理すると、

嫌疑なし
→ 犯罪をしたという嫌疑が認められない

嫌疑不十分
→ 犯罪の疑いはあるものの証拠が十分ではない

起訴猶予
→ 犯罪の嫌疑はあるが、事情を考慮して起訴しない

というイメージになります。

起訴猶予になると前科はつく?

多くの人が気になるのが、

「起訴猶予になったら前科になるの?」

という点でしょう。

結論として、起訴猶予では前科はつきません。

一般に前科とは、刑事裁判で有罪判決などを受けた経歴を指します。

起訴猶予の場合は起訴されず、有罪判決を受けていません。

したがって、

逮捕

捜査

起訴猶予

裁判なし

有罪判決なし

前科なし

となります。

これは嫌疑なしや嫌疑不十分など、ほかの不起訴処分でも同様です。

不起訴でも「前歴」は残る?

ここで「前科」と「前歴」の違いにも注意が必要です。

一般的に、

前科=有罪判決などを受けた経歴

であるのに対し、

前歴=犯罪の捜査対象になった経歴など

を指して使われます。

そのため、逮捕・捜査された後に不起訴になった場合でも、捜査機関内部の記録などが残ることがあります。

つまり、

不起訴だから前科はつかない

ものの、

事件に関する記録がすべて消えて、最初から何もなかった状態になる

とは限りません。

逮捕されたら前科がつく?

これもよくある誤解です。

逮捕=前科ではありません。

逮捕は、捜査のために身体を拘束する刑事手続きの一つです。

その後、

逮捕 → 不起訴

となれば、刑事裁判で有罪判決を受けていないため、通常「前科がついた」ということにはなりません。

逆に、逮捕されていなくても在宅事件として捜査され、起訴されて有罪になれば前科がつくことがあります。

そのため、

「逮捕されたかどうか」と「前科があるかどうか」は別問題

です。

起訴猶予と執行猶予はまったく違う

名前が似ているため、特に間違えやすいのが、

起訴猶予と執行猶予

です。

この2つはまったく意味が違います。

起訴猶予

検察官が起訴しない。

そのため原則として刑事裁判には進まず、有罪判決もありません。

→ 前科はつかない

執行猶予

起訴された後に刑事裁判が行われ、有罪判決を受けたものの、一定期間、刑の執行を猶予する制度です。

たとえば、

「懲役(拘禁刑)○年、執行猶予○年」

などです。

有罪判決を受けているため、

→ 前科がつく

という大きな違いがあります。

「猶予」という言葉が共通していますが、混同しないようにしましょう。

起訴猶予になれば完全に事件終了?

通常、検察官が不起訴処分をすると、その時点では刑事裁判には進みません。

ただし、「不起訴になれば法律上どんな場合でも永遠に起訴されない」とまで単純化することはできません。

たとえば新しい証拠が見つかった場合など、事情によっては再び捜査・処分が問題になる可能性があります。

また、刑事事件として不起訴になったことと、民事上の損害賠償責任は別問題です。

不起訴でも損害賠償を請求される?

可能性はあります。

刑事責任と民事責任は別だからです。

たとえば刑事事件について不起訴になったとしても、被害者側が、

  • 治療費
  • 修理費
  • 慰謝料
  • その他の損害

などについて民事上の損害賠償を求めるケースがあります。

したがって、

不起訴=すべての法的責任がなくなる

とは限りません。

示談すれば起訴猶予になる?

被害者との示談成立は、検察官が処分を判断するときに考慮される事情の一つになることがあります。

特に比較的軽微な事件などでは、

  • 被害弁償が済んでいる
  • 被害者との示談が成立している
  • 被害者の処罰感情が弱まっている
  • 本人が反省している

といった事情が処分に影響する場合があります。

ただし、

「示談成立=必ず不起訴」

ではありません。

事件の重大性や前科・前歴、犯罪後の状況など、さまざまな事情が総合的に考慮されます。

なぜニュースでは不起訴の理由を言わないことがある?

ニュースを見ていると、

「検察は不起訴の理由を明らかにしていません」

という報道をよく耳にします。

そのため視聴者からすると、

「嫌疑なしなの?」

「証拠不足なの?」

「起訴猶予なの?」

と疑問が残ることがあります。

検察が個別事件について不起訴理由の詳細を公表しないケースは珍しくありません。

そのため、報道が単に「不起訴」とだけ伝えている場合、外部から理由を断定することはできません。

特にSNSなどで、

「不起訴だから完全な無実だ」

「不起訴だから実際にはやっている」

などと断定するのは避けた方がよいでしょう。

起訴猶予・不起訴・無罪・執行猶予の違い

混乱しやすい4つの言葉を整理してみます。

用語 意味 刑事裁判 有罪判決 前科
不起訴 検察官が起訴しない 原則なし なし なし
起訴猶予 不起訴理由の一つ 原則なし なし なし
無罪 裁判所が無罪判決 あり なし なし
執行猶予付き有罪判決 刑の執行を一定期間猶予 あり あり あり

この表を見ると、

不起訴・起訴猶予と無罪は「有罪判決を受けていない」という点では共通していても、そこに至る手続きが違う

ことが分かります。

起訴猶予についてよくある疑問

Q. 起訴猶予と不起訴はどっちが軽い?

「どちらが軽い」という比較ではありません。

起訴猶予そのものが不起訴処分の一種だからです。

「果物とリンゴはどちらが果物?」と聞くのと似た関係で、

不起訴というカテゴリーの中に起訴猶予がある

と考えるとわかりやすいでしょう。

Q. 起訴猶予は無罪?

無罪判決ではありません。

起訴されていないため、裁判所による有罪・無罪の判断そのものが行われていません。

Q. 起訴猶予で前科はつく?

起訴猶予では有罪判決を受けていないため、前科はつきません。

Q. 不起訴なら犯罪をしていないということ?

必ずしもそうとは限りません。

「嫌疑なし」で不起訴になる場合もあれば、「嫌疑不十分」「起訴猶予」などを理由として不起訴になる場合もあります。

不起訴という結果だけから事実関係を断定することはできません。

Q. 起訴猶予と執行猶予は同じ?

まったく違います。

起訴猶予は起訴されない処分

執行猶予は有罪判決を受けたうえで刑の執行を猶予する制度です。

前科の有無にも違いがあります。

まとめ

起訴猶予と不起訴の違いで最も重要なのは、起訴猶予が不起訴処分の一種であることです。

簡単に整理すると、

不起訴
├ 嫌疑なし
├ 嫌疑不十分
├ 起訴猶予
└ その他の理由

というイメージです。

起訴猶予は、犯罪の嫌疑がある場合でも、犯人の性格や年齢、犯罪の軽重、情状、犯罪後の状況などを考慮し、検察官が起訴する必要がないと判断した場合の処分です。

そして、

  • 起訴猶予は不起訴の一種
  • 不起訴になれば原則として刑事裁判には進まない
  • 起訴猶予でも前科はつかない
  • ただし捜査を受けた記録などが残ることはある
  • 不起訴と無罪判決は同じではない
  • 起訴猶予と執行猶予はまったく違う
  • 不起訴でも民事上の損害賠償が問題になることはある

という点を押さえておくとよいでしょう。

ニュースで「不起訴処分になりました」とだけ報道された場合、その情報だけでは「嫌疑なし」「嫌疑不十分」「起訴猶予」のどれなのか分からないことがあります。

不起訴という言葉だけから「無実だった」「犯罪をした」と決めつけず、不起訴には複数の理由があることを理解してニュースを見ることが大切です。

※この記事は刑事手続きについて一般的に解説したもので、個別事件への法的助言ではありません。実際の事件について判断が必要な場合は弁護士などの専門家へ相談してください。

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