腎臓の機能が大きく低下したときに必要となる「透析治療」。
一般的には病院やクリニックへ定期的に通う「通院透析」をイメージする人が多いでしょう。
しかし最近では、
「おうち透析って何?」
「自宅でも透析できるの?」
「通院透析とおうち透析は何が違う?」
と気になっている人もいるのではないでしょうか。
結論からいうと、通院透析は医療機関で受ける透析、おうち透析は自宅で行う透析を指す表現です。
ただし、「おうち透析」は特定の一つの治療法を意味する正式な医学用語とは限りません。
自宅で行う透析には主に、
在宅血液透析(HHD)
と
腹膜透析(PD)
があり、それぞれ方法が大きく異なります。
この記事では、通院透析とおうち透析の違いから、それぞれのメリット・デメリット、治療時間、費用、どんな人に向いているのかまで分かりやすく解説します。
通院透析とおうち透析の違いを簡単に比較
まず、大まかな違いを比較してみましょう。
| 比較項目 | 通院透析 | おうち透析 |
|---|---|---|
| 透析する場所 | 病院・透析クリニックなど | 自宅 |
| 代表的な方法 | 血液透析(HD) | 在宅血液透析(HHD)・腹膜透析(PD) |
| 通院 | 定期的に必要 | 方法により通院回数を減らせる |
| 治療管理 | 医療スタッフが中心 | 患者・家族自身の管理が増える |
| 時間の自由度 | 比較的低い | 比較的高い |
| 自宅の設備 | 原則不要 | 方法によって設備・物品保管場所などが必要 |
| 自己管理 | 必要 | より高い自己管理能力が求められる |
大きな違いは、単純に「病院か自宅か」だけではありません。
誰が透析を管理するのか、どのような方法で血液を浄化するのか、生活の自由度がどの程度あるのかなどにも違いがあります。
通院透析とは?
通院透析とは、病院や透析クリニックなどへ通って受ける透析治療です。
日本で広く行われているのが施設血液透析です。
血液透析では、腕などに作った「シャント」と呼ばれる血液の出入り口から血液を体外へ取り出します。
そして「ダイアライザ」と呼ばれる装置を通して、血液中にたまった老廃物や余分な水分などを取り除き、きれいになった血液を体内へ戻します。
腎臓が行っていた仕事の一部を、透析装置によって代わりに行うイメージです。
通院透析は週何回?
一般的な施設血液透析では、
週3回程度
行われるケースが一般的です。
1回あたりの透析時間は約4時間程度が標準的です。
たとえば、
月・水・金
または、
火・木・土
というようなスケジュールで透析施設へ通います。
実際には透析時間だけでなく、
- 自宅から病院への移動
- 受付
- 透析前の準備
- 透析後の止血
- 帰宅
などの時間も必要です。
そのため仕事をしている人にとっては、透析スケジュールと仕事をどう両立するかが大きな課題になる場合があります。
おうち透析とは?
「おうち透析」という言葉は、一般的に自宅で行う透析治療を分かりやすく表したものです。
ここで注意したいのが、
おうち透析=一つの透析方法
ではないことです。
自宅でできる代表的な透析には、
在宅血液透析(HHD)
と、
腹膜透析(PD)
があります。
この2つは、同じ「自宅でできる透析」でも仕組みがまったく違います。
在宅血液透析(HHD)とは?
在宅血液透析は英語で、
Home Hemodialysis(HHD)
と呼ばれます。
病院で行われる血液透析と同じように、血液を体外へ取り出して透析装置で浄化します。
最大の違いは、
自宅に透析装置などを設置し、自宅で血液透析を行う
ことです。
患者自身が透析の準備や穿刺、機器の操作などを行うため、導入する前には十分なトレーニングが必要になります。
また、医療機関によっては介助者が必要になるなど、導入条件が定められています。
「希望すれば誰でも明日から自宅でできる」という治療ではありません。
腹膜透析(PD)とは?
もう一つの「おうち透析」が**腹膜透析(PD)**です。
腹膜透析では、血液を体外へ取り出して機械に通すのではありません。
自分のお腹の中にある「腹膜」を利用して、体内の老廃物や余分な水分を取り除きます。
お腹にカテーテルという管を留置し、そこから透析液を出し入れします。
腹膜透析には大きく、
CAPD(連続携行式腹膜透析)
と
APD(自動腹膜透析)
があります。
CAPDは患者自身が日中などに透析液を交換する方法。
APDは専用の機械を使用して、主に就寝中に自動的に透析液を交換する方法です。
ライフスタイルに合わせて治療方法が検討されます。
「おうち透析」は血液透析だけではない
ここは特に間違えやすいポイントです。
インターネットで「おうち透析」と検索すると、自宅に透析装置を置いて行う在宅血液透析をイメージする人も多いでしょう。
しかし、自宅で行える透析には腹膜透析もあります。
整理すると、
透析治療
→ 血液透析
→ 施設血液透析
→ 在宅血液透析
→ 腹膜透析
→ CAPD
→ APD
というように考えると分かりやすいでしょう。
「自宅で透析したい」と考えている場合は、単に病院の血液透析を自宅へ移せばよいという話ではありません。
患者の病状や生活環境などを考慮し、医師と相談しながら適した方法を検討します。
違い① 透析する場所
最も分かりやすい違いが治療場所です。
通院透析
病院や透析クリニックなどの医療機関で行います。
医師、看護師、臨床工学技士などの医療スタッフがいる環境で治療を受けられます。
おうち透析
自宅で行います。
毎回医療機関へ行かなくても治療できるため、通院にかかる時間や負担を減らせる可能性があります。
特に透析施設まで遠い人にとっては大きなメリットになる場合があります。
違い② 時間の自由度
通院透析の場合、基本的には透析施設が決めた時間帯に合わせる必要があります。
週3回程度、1回約4時間というスケジュールが一般的なので、
「仕事との両立が難しい」
「旅行の日程を組みにくい」
と感じる人もいるでしょう。
在宅透析の場合は、医師の治療計画などに従う必要はありますが、生活に合わせて透析スケジュールを組みやすいというメリットがあります。
在宅血液透析では、施設透析より透析回数や時間を増やせる場合もあります。
ただし、自由に好きなだけ透析できるという意味ではありません。
医師の指示や治療計画に従って行います。
違い③ 医療スタッフとの距離
通院透析の大きなメリットが、
医療スタッフが近くにいる
ことです。
透析中に、
- 血圧が低下した
- 気分が悪くなった
- 出血した
- 機器にトラブルが起きた
といった場合でも、医療スタッフが対応します。
一方、在宅血液透析では患者自身が機器を操作し、異常が発生した際の初期対応なども求められます。
だからこそ、導入前に十分な訓練が必要なのです。
違い④ 自己管理の負担
おうち透析では、通院透析よりも自己管理が重要になります。
在宅血液透析の場合、
- 透析装置の操作
- 穿刺
- 透析前後の準備
- 衛生管理
- 消耗品の管理
- 体調管理
- トラブル時の対応
などを学ぶ必要があります。
腹膜透析でも、透析液の交換やカテーテル周囲の清潔管理などが必要です。
特に腹膜透析では、細菌などが腹腔内に入り「腹膜炎」を起こさないよう、衛生管理が非常に重要です。
通院透析のメリット
通院透析の代表的なメリットは、医療スタッフの管理下で治療を受けられる安心感です。
具体的には、
- 医療スタッフが透析を管理してくれる
- 機械操作を自分でする必要が少ない
- 透析中の体調変化に対応してもらえる
- 自宅に透析設備を置く必要がない
- 消耗品などを自宅で大量に管理する必要がない
などがあります。
「透析は専門家に管理してもらいたい」という人にとって、施設血液透析は選択しやすい方法でしょう。
通院透析のデメリット
一方、代表的なデメリットとしては、
- 週3回程度の通院が必要
- 1回約4時間かかる
- 通院時間も必要
- 仕事との調整が必要になる
- 透析施設のスケジュールに合わせる必要がある
- 旅行先でも透析施設を探す必要がある場合がある
などが挙げられます。
透析は長期間続ける治療になることが多いため、「週3回通う」という負担は決して小さくありません。
おうち透析のメリット
在宅透析の大きな魅力は、生活の自由度を高めやすいことです。
特に在宅血液透析では、
- 通院回数を減らせる
- 通院時間を節約できる
- 生活に合わせて透析時間を調整しやすい
- 施設透析より頻回・長時間の透析を行える場合がある
- 仕事との両立がしやすくなる場合がある
といったメリットがあります。
透析回数や透析時間を増やすことで、体内に老廃物や余分な水分がたまる時間を短くできる可能性があります。
ただし治療内容は患者自身が自由に決めるのではなく、必ず医師の指示に従います。
おうち透析のデメリット
一方で、自宅でできるから「楽」というわけではありません。
在宅血液透析では、
- 導入前にトレーニングが必要
- 自分で穿刺する必要がある場合がある
- 機械操作を覚える必要がある
- トラブルへの対応を学ぶ必要がある
- 自宅に装置を置くスペースが必要
- 透析用品の保管スペースが必要
- 電気や水道を使用する
- 医療機関によっては介助者が必要
といった課題があります。
腹膜透析でも、透析液や物品を保管するスペース、毎日の治療・衛生管理などが必要です。
つまり、おうち透析は、
通院負担が減る代わりに、自分で管理する部分が増える
治療ともいえます。
おうち透析の費用は高い?
透析治療は高額になるため、
「自宅で透析すると何百万円も自己負担になるのでは?」
と心配する人もいるでしょう。
日本では透析治療について健康保険が適用され、さらに高額療養費制度や「特定疾病療養受療証」などによって自己負担を抑える仕組みがあります。
慢性腎不全で人工透析を受ける場合、特定疾病療養受療証を利用することで、条件を満たせば医療機関ごとの1か月の自己負担上限が原則1万円となります。
ただし一定以上の所得がある70歳未満の人では、上限が2万円となる場合があります。
さらに自治体によっては障害者医療費助成などを利用できるケースもあります。
一方、在宅血液透析では、
- 電気代
- 水道代
- 自宅設備に関する費用
など、医療費とは別の負担が発生する可能性があります。
費用については導入する医療機関や自宅環境などによって異なるため、事前に確認することが重要です。
おうち透析なら病院に行かなくていい?
これは誤解しやすいポイントです。
自宅で透析できても、病院への通院が完全になくなるわけではありません。
在宅血液透析でも、定期的に医療機関を受診して、
- 血液検査
- 体調確認
- シャントの状態
- 透析条件
などを確認してもらう必要があります。
腹膜透析についても定期的な受診が必要です。
「おうち透析=病院に一切行かなくてよい」という意味ではありません。
おうち透析は誰でもできる?
在宅血液透析は希望すれば誰でも選択できるわけではありません。
安全に治療するためには、
- 治療内容を理解できる
- 自己管理ができる
- 機器操作などを習得できる
- 自宅に必要な環境を整えられる
- 緊急時の対応を理解している
- 医療機関が定める導入条件を満たす
などが必要になります。
また、在宅血液透析に対応している医療機関は限られています。
腹膜透析についても、患者の病状や腹部の状態、生活環境などによって適しているか判断されます。
通院透析が向いている人
一般的には、
- 医療スタッフに管理してもらいたい
- 自分で機械を操作するのが不安
- 自己穿刺に抵抗がある
- 自宅に透析設備を置く場所がない
- 自宅での治療管理が難しい
という人は、施設で行う通院透析が選択肢になりやすいでしょう。
医療スタッフがそばにいることは、通院透析の大きな安心材料です。
おうち透析が向いている人
一方、
- 通院時間の負担を減らしたい
- 仕事と透析を両立したい
- 自分の生活に合わせて治療したい
- 自己管理に積極的に取り組める
- 自宅に治療環境を整えられる
という人は、在宅透析を検討できる可能性があります。
ただし「自宅でやりたい」という希望だけで決めるものではありません。
患者の病状や生活スタイル、家族の状況、自宅環境などを含めて医療スタッフと相談することが重要です。
通院透析とおうち透析、結局どっちがいい?
結論として、すべての人にとって「こちらのほうが良い」といえる治療方法はありません。
通院透析には、
「医療スタッフに任せられる安心感」
があります。
おうち透析には、
「生活に合わせやすい自由度」
があります。
しかし、おうち透析ではその自由度と引き換えに自己管理の責任も大きくなります。
また、自宅透析には在宅血液透析だけでなく腹膜透析という選択肢もあります。
そのため透析方法を検討するときには、
病状・年齢・仕事・生活スタイル・自宅環境・家族のサポート・本人の希望
などを総合的に考えることが重要です。
まとめ|通院透析とおうち透析は「場所」だけでなく治療方法も違う
今回は「通院透析」と「おうち透析」の違いについて解説しました。
ポイントをまとめると、
- 通院透析は病院や透析クリニックなどで受ける透析
- 一般的な施設血液透析は週3回程度、1回約4時間が標準的
- 「おうち透析」は自宅で行う透析を分かりやすく表した言葉
- 自宅でできる透析には「在宅血液透析(HHD)」と「腹膜透析(PD)」がある
- 在宅血液透析は自宅に透析装置などを設置して行う
- 腹膜透析は自分の腹膜を利用して血液を浄化する
- おうち透析は通院負担を減らし、生活の自由度を高めやすい
- 一方で機器操作や衛生管理など自己管理の負担が増える
- おうち透析でも定期的な病院受診は必要
- 誰でも在宅透析を選べるわけではない
という違いがあります。
特に覚えておきたいのは、
「通院透析 vs おうち透析」という単純な二択ではない
ということです。
自宅で行う透析にも、在宅血液透析や腹膜透析など異なる選択肢があります。
それぞれメリット・デメリットがあるため、「通院が大変だから自宅透析にしよう」と自己判断するのではなく、腎臓内科や透析医療に詳しい医師・医療スタッフと相談し、自分の病状や生活に合った治療方法を検討することが大切です。


