「技能実習制度は廃止されるって本当?」
「外国人労働者は自由に転職できるようになるの?」
外国人材の受け入れ制度が見直されるなかで、このような疑問を持っている人も多いのではないでしょうか。
育成就労制度とは、外国人材を日本で働きながら育成し、人手不足の分野で活躍してもらうことを目的とした新しい制度です。
一方、技能実習制度は、日本で身につけた技能を母国に持ち帰り、国際貢献につなげることを目的としてきました。
両者の大きな違いは、制度の目的だけでなく、転籍(勤務先の変更)のルールや特定技能制度とのつながりにもあります。
この記事では、育成就労と技能実習の違いを、制度の目的・在留期間・転籍・日本語能力・受け入れ企業への影響などの観点から、初心者にもわかりやすく解説します。
育成就労と技能実習の違いを比較表でチェック
まずは、育成就労制度と技能実習制度の主な違いを比較してみましょう。
| 比較項目 | 育成就労制度 | 技能実習制度 |
|---|---|---|
| 主な目的 | 人材育成と人材確保 | 技能移転による国際貢献 |
| 制度開始 | 2027年4月1日 | 1993年に制度開始、2017年に現行法施行 |
| 在留期間 | 原則3年間 | 最長5年間 |
| 転籍 | 一定条件で本人希望による転籍が可能 | 原則不可、やむを得ない場合は可能 |
| 日本語能力 | 一定の要件あり | 原則なし(介護などを除く) |
| 特定技能への移行 | 原則として試験合格が必要 | 技能実習2号を良好に修了した場合などは試験免除あり |
| 対象分野 | 育成就労産業分野 | 技能実習の対象職種・作業 |
| 監理・支援 | 監理支援機関 | 監理団体 |
| 将来の就労 | 特定技能1号への移行を想定 | 技能移転・帰国を基本的な考え方とする |
育成就労制度では、外国人を日本の労働力として受け入れることを制度の目的に明確に位置づけています。
また、一定の条件で本人の希望による転籍を認めるなど、外国人労働者の権利保護にも重点が置かれています。
育成就労制度とは?新しく導入される外国人材の受け入れ制度
育成就労制度とは、日本の人手不足分野において、外国人材を育成・確保するために設けられる制度です。
2024年6月に関連する改正法が公布され、2027年4月1日から施行されます。
育成就労制度では、外国人が日本で働きながら技能や日本語能力を身につけ、原則3年間で特定技能1号の水準に達することを目指します。
育成就労制度の主な特徴
育成就労制度には、次のような特徴があります。
-
外国人材の育成と人手不足への対応を目的とする
-
原則3年間の就労を通じて技能を習得する
-
特定技能1号への移行を想定している
-
一定条件のもとで本人希望による転籍が認められる
-
日本語能力に関する要件が設けられる
つまり、外国人が日本で働きながら成長し、その後も日本で活躍できる仕組みを整えることが目的です。
技能実習制度とは?なぜ廃止されるの?
技能実習制度とは、日本で外国人が技術や知識を身につけ、その技能を母国に持ち帰って活用することを目的とした制度です。
技能実習制度は、国際貢献を目的として運用されてきました。
しかし、実際には日本国内の人手不足を補う役割も担っていました。
また、一部の受け入れ先では、長時間労働や賃金未払い、人権侵害などの問題が指摘されてきました。
特に問題視されたのが、技能実習生が原則として自由に勤務先を変更できない仕組みです。
こうした課題を踏まえ、技能実習制度を発展的に解消し、育成就労制度へ移行することになりました。
育成就労と技能実習の違い① 制度の目的
両制度の最も大きな違いは、制度が設けられた目的です。
技能実習は国際貢献が目的
技能実習制度は、外国人が日本で技能を学び、帰国後に母国の経済発展などに役立てることを目的としています。
そのため、制度上は日本の人手不足を補うこと自体が目的ではありませんでした。
育成就労は人材育成と人材確保が目的
一方、育成就労制度は、日本国内の人手不足分野で外国人材を育成・確保することを目的としています。
つまり、外国人を日本の産業を支える働き手として位置づけている点が大きな違いです。
育成就労と技能実習の違い② 転籍・転職のルール
育成就労制度で特に注目されているのが、転籍のルールです。
転籍とは、外国人が現在の受け入れ企業から別の受け入れ企業へ勤務先を変更することです。
技能実習では原則として転籍できない
技能実習制度では、本人の希望だけで自由に勤務先を変更することは原則として認められていません。
ただし、受け入れ企業の倒産や人権侵害など、やむを得ない事情がある場合には転籍が認められることがあります。
育成就労では一定条件で転籍できる
育成就労制度では、やむを得ない事情がある場合に加えて、本人の希望による転籍も一定の条件で認められます。
主な条件には、次のようなものがあります。
-
同じ業務区分内での転籍であること
-
分野ごとに定められた就労期間を経過していること
-
一定の技能・日本語能力を身につけていること
-
転籍先が所定の受け入れ条件を満たしていること
本人希望による転籍に必要な就労期間は、分野に応じて原則1年以上2年以下の範囲で定められます。
したがって、育成就労になれば外国人がいつでも自由に転職できるというわけではありません。
育成就労と技能実習の違い③ 在留期間
在留期間にも違いがあります。
技能実習は最長5年間
技能実習制度には、1号・2号・3号という区分があります。
| 区分 | 期間 |
|---|---|
| 技能実習1号 | 1年間 |
| 技能実習2号 | 2年間 |
| 技能実習3号 | 2年間 |
| 合計 | 最長5年間 |
ただし、すべての技能実習生が5年間在留できるわけではありません。
技能実習3号へ移行するには、所定の条件を満たす必要があります。
育成就労は原則3年間
育成就労制度では、原則3年間の就労を通じて特定技能1号の水準を目指します。
技能実習制度
1号 1年
2号 2年
3号 2年
育成就労制度
育成就労 原則3年
特定技能へ移行を想定
※特定技能への移行には所定の要件があります。図の長さは制度上の期間を厳密に表したものではありません。
育成就労制度では、育成就労を終えた後、一定の条件を満たして特定技能1号に移行することで、引き続き日本で働く道が用意されています。
育成就労と技能実習の違い④ 日本語能力の要件
育成就労制度では、日本語能力の要件が設けられることも大きな変更点です。
技能実習は原則として日本語能力要件がない
技能実習制度では、介護など一部の職種を除き、制度上の一律の日本語能力要件はありませんでした。
ただし、実際には受け入れ企業や送出機関などが日本語教育を実施することがあります。
育成就労では日本語能力が求められる
育成就労制度では、就労開始時に一定の日本語能力が求められます。
例えば、日本語能力試験N5相当の試験合格や、認定された日本語教育機関などによる所定の講習の受講といった方法が設けられています。
また、育成就労を通じて、特定技能1号へ移行するために必要な日本語能力を身につけることが想定されています。
これにより、職場での意思疎通や安全確保、日常生活への適応などを支援する狙いがあります。
育成就労と技能実習の違い⑤ 特定技能への移行
育成就労制度では、特定技能制度との連携が重視されています。
特定技能とは?
特定技能とは、人手不足が深刻な産業分野で、一定の専門性や技能を持つ外国人が働くための在留資格です。
特定技能には、1号と2号があります。
特定技能1号は、一定の技能や日本語能力を持つ外国人を対象とした制度です。
特定技能2号は、対象分野で熟練した技能を持つ外国人を対象としています。
育成就労から特定技能1号への移行
育成就労制度では、原則3年間の就労を通じて、特定技能1号の水準に達することを目指します。
ただし、育成就労を3年間行えば、自動的に特定技能1号へ移行できるわけではありません。
原則として、技能試験や日本語試験などの要件を満たす必要があります。
一方、技能実習制度では、技能実習2号を良好に修了した場合、関連する分野の特定技能1号への移行に際して、試験が免除される仕組みがあります。
この点も大きな違いです。
育成就労の対象職種は?技能実習と同じ?
育成就労制度の対象は、「育成就労産業分野」と呼ばれる分野です。
これは、特定技能制度の対象分野のうち、就労を通じて技能を身につけることが適切と認められる分野です。
例えば、製造業、建設、農業、介護などに関係する分野が含まれます。
ただし、技能実習制度の対象だった職種・作業が、すべてそのまま育成就労の対象になるわけではありません。
企業が外国人材の受け入れを検討する際には、対象となる産業分野だけでなく、具体的な業務区分まで確認する必要があります。
育成就労制度はいつから始まる?
育成就労制度は、2027年4月1日から施行されます。
2024年6月に関連する改正法が公布され、制度開始に向けた準備が進められています。
2026年11月3日時点では、すでに監理支援機関の許可申請や育成就労計画の認定に関する施行前申請の受付が始まっています。
ただし、実際に育成就労外国人を受け入れられるのは2027年4月1日からです。
技能実習制度は2027年に完全廃止される?
技能実習制度は育成就労制度へ移行しますが、2027年4月1日になった瞬間に、すべての技能実習生が育成就労へ切り替わるわけではありません。
経過措置が設けられています。
現在の技能実習生はどうなる?
2027年4月1日時点ですでに日本で技能実習を行っている外国人は、原則として引き続き認定された技能実習計画に基づいて実習を続けられます。
また、施行前に技能実習計画の認定申請が行われ、所定の期限までに実習を開始する場合も、経過措置の対象になることがあります。
ただし、技能実習3号への移行などには条件があり、すべての実習生が従来どおり最長5年間の実習を続けられるわけではありません。
特に、2027年4月1日時点で技能実習2号の活動を1年以上行っているかどうかが、3号への移行に関係します。
育成就労制度で企業の負担はどう変わる?
育成就労制度の導入によって、外国人材を受け入れる企業にも変化が生じます。
① 日本語教育や人材育成への対応
育成就労制度では、外国人材の日本語能力や技能の向上が重視されます。
そのため、企業には計画的な人材育成や教育体制の整備が求められます。
② 転籍への対応
一定条件で本人希望による転籍が認められるため、企業は外国人材が働き続けたいと思える職場環境を整えることが重要になります。
賃金や労働時間だけでなく、相談体制や職場でのコミュニケーションなども大切になるでしょう。
③ 監理支援機関との連携
育成就労制度では、従来の監理団体に代わり、監理支援機関が外国人材の受け入れを支援・監理します。
受け入れ企業は、新制度に対応した手続きや計画の認定などを進める必要があります。
育成就労制度のメリット・デメリット
外国人労働者にとってのメリット
育成就労制度では、一定条件で本人希望による転籍が認められます。
そのため、従来より勤務先の選択肢が広がる可能性があります。
また、特定技能への移行を想定した制度になっているため、日本での中長期的なキャリアを考えやすくなることも期待されています。
外国人労働者にとってのデメリット・課題
一方、転籍には就労期間や日本語能力などの条件が設けられています。
そのため、希望すればすぐに転籍できるわけではありません。
また、日本語学習や技能試験への対応も必要になります。
企業にとってのメリット
企業にとっては、外国人材を計画的に育成し、特定技能への移行後も継続して働いてもらえる可能性があります。
長期的な人材確保につながることが期待されています。
企業にとってのデメリット・課題
一方、日本語教育や技能育成、受け入れ体制の整備などに費用や時間がかかる可能性があります。
また、本人希望による転籍が認められるため、人材の定着に向けた取り組みも重要になります。
育成就労と技能実習に関するよくある質問
Q1. 育成就労と技能実習は何が一番違いますか?
最も大きな違いは制度の目的です。
技能実習は国際貢献を目的としていましたが、育成就労は日本の人手不足分野での人材育成と人材確保を目的としています。
また、育成就労では一定条件で本人希望による転籍が認められます。
Q2. 育成就労制度はいつから始まりますか?
2027年4月1日から始まります。
ただし、技能実習制度からの移行には経過措置が設けられています。
Q3. 育成就労では自由に転職できますか?
自由に転職できるわけではありません。
本人希望による転籍には、一定の就労期間、日本語能力、技能水準などの条件があります。
また、原則として同一の業務区分内での転籍となります。
Q4. 育成就労では何年間働けますか?
育成就労制度での就労期間は原則3年間です。
その後、所定の要件を満たして特定技能1号へ移行すれば、引き続き日本で働くことが可能です。
Q5. 技能実習生は全員帰国しなければなりませんか?
いいえ。
経過措置の対象となる技能実習生は、認定された計画に基づいて引き続き技能実習を行える場合があります。
また、要件を満たせば特定技能へ移行する道もあります。
Q6. 育成就労制度で外国人の給料は上がりますか?
制度が変わるだけで、すべての外国人労働者の給料が自動的に上がるわけではありません。
ただし、適切な賃金や労働条件の確保に加えて、本人希望による転籍が一定条件で認められることから、待遇改善につながる可能性はあります。
まとめ:育成就労と技能実習の違いは目的と転籍ルール
今回は、育成就労と技能実習の違いについて解説しました。
重要なポイントは次のとおりです。
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技能実習: 日本で技能を習得し、母国への技能移転を通じて国際貢献する制度
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育成就労: 日本の人手不足分野で外国人材を育成・確保する制度
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育成就労では、一定条件で本人希望による転籍が認められる
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育成就労の就労期間は原則3年間
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育成就労では日本語能力に関する要件が設けられる
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特定技能1号への移行を想定した仕組みになっている
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新制度は2027年4月1日から始まる
特に重要なのは、育成就労制度では外国人を日本の産業を支える人材として育成・確保することが、制度の目的として明確になった点です。
一方、転籍の条件や日本語教育、企業の受け入れ体制など、運用上の課題もあります。
今後、外国人材の受け入れを検討する企業や日本で働きたい外国人にとって、育成就労制度の仕組みを正しく理解することが重要になるでしょう。

