「アスベスト」と「石綿(いしわた・せきめん)」という言葉をニュースなどで耳にすることがあります。
「アスベストと石綿は何が違うの?」
「石綿ならアスベストより安全?」
「古い家に使われていたら危険なの?」
と疑問に思っている人もいるでしょう。
結論からいうと、アスベストと石綿は基本的に同じものです。
「アスベスト(asbestos)」は英語由来の呼び方で、「石綿」は日本語での呼び方です。
つまり、
アスベスト=石綿
と考えて問題ありません。
重要なのは名前の違いではなく、アスベスト(石綿)の非常に細い繊維を吸い込むことで、長い年月を経て中皮腫や肺がんなどの病気を引き起こす可能性があることです。
一方で、古い建物にアスベストが使われているからといって、直ちに健康被害が起きるわけではありません。
特に注意が必要なのは、建材を壊したり削ったりしてアスベストの繊維が空気中へ飛散する状況です。
この記事では、アスベストと石綿の違いから、危険性、使用されていた場所、古い住宅で見つかった場合の対処方法まで初心者向けに分かりやすく解説します。
アスベストと石綿の違いは?
最初に結論を整理してみましょう。
| 比較 | アスベスト | 石綿 |
|---|---|---|
| 意味 | 天然に産出する繊維状の鉱物 | アスベストの日本語名 |
| 違い | 基本的になし | 基本的になし |
| 英語 | asbestos | asbestos |
| 読み方 | アスベスト | いしわた・せきめん |
| 主な用途 | 建材など | 同じ |
| 健康リスク | 吸入による健康被害 | 同じ |
つまり、
「アスベストと石綿は別の物質」ではありません。
行政機関の資料などでは「石綿(アスベスト)」のように両方を併記することもあります。
ニュースでは「アスベスト」、法律や行政関係では「石綿」という表現を目にすることがありますが、基本的には同じものを指しています。
そもそもアスベスト(石綿)とは?
アスベストとは、天然に産出する繊維状の鉱物の総称です。
非常に細い繊維でできていることが特徴です。
かつては、
- 熱に強い
- 燃えにくい
- 摩擦に強い
- 断熱性がある
- 絶縁性がある
- 加工しやすい
など優れた性質を持つ材料として広く利用されていました。
特に建築分野では、耐火・断熱・防音などを目的として多くの建材に使用されてきました。
しかし、その後アスベストの繊維を吸い込むことによる深刻な健康被害が問題となり、日本では現在、原則として製造・使用などが禁止されています。
「石綿」はなぜ「いしわた」と呼ぶ?
石綿という漢字を見ると、
「石なの?綿なの?」
と不思議に思うかもしれません。
アスベストは鉱物でありながら、非常に細い繊維状に分かれる性質があります。
その姿が綿のように見えることから「石綿」と呼ばれています。
読み方は、
「いしわた」
と呼ばれることもあれば、
「せきめん」
と読まれることもあります。
行政資料などでは「石綿(いしわた)」という表現もよく使われます。
アスベストには種類がある
「アスベスト」という名前の一つの物質だけが存在するわけではありません。
日本の法令上の石綿には、主に次の6種類があります。
- クリソタイル(白石綿)
- クロシドライト(青石綿)
- アモサイト(茶石綿)
- アンソフィライト
- トレモライト
- アクチノライト
過去に特に多く使用されたのがクリソタイルなどです。
ただし一般の人が、
「これは白石綿だから大丈夫」
などと種類によって自己判断するのは避けましょう。
いずれも石綿として規制の対象になります。
アスベストはなぜ危険なの?
問題になるのは、アスベストの非常に細い繊維です。
建材などから飛散した繊維を吸い込むと、一部が肺などに残ることがあります。
長期間を経て、
- 石綿肺
- 肺がん
- 悪性中皮腫
などを引き起こす可能性があります。
特に特徴的なのが、健康被害がすぐに現れるとは限らないことです。
アスベスト関連疾患は、曝露から発症まで非常に長い期間が経過することがあります。
そのため、過去に仕事などでアスベストへ曝露した人の健康被害が何十年もたってから明らかになるケースがあります。
石綿肺とは?
石綿肺は、アスベストの粉じんを長期間・大量に吸い込むことで肺が線維化する「じん肺」の一種です。
肺が硬くなり、呼吸機能が低下していきます。
進行すると、
- 息切れ
- 咳
- 呼吸困難
などが現れることがあります。
主に職業上、長期間にわたってアスベスト粉じんへ曝露していた人などで問題となってきました。
中皮腫とは?
アスベストの健康被害を語るうえでよく登場するのが悪性中皮腫です。
中皮腫は、肺を覆う胸膜や腹部の臓器を覆う腹膜などに発生する悪性腫瘍です。
アスベストへの曝露との関連が強い病気として知られています。
アスベストを吸い込んでから発症まで数十年という長い潜伏期間を経ることがあるのが特徴です。
そのため、現在はアスベストを扱っていなくても、過去の職業歴などが重要になる場合があります。
アスベストを1回吸ったらがんになる?
「古い建物に入ってしまった」
「リフォーム中に少し粉じんを吸ったかもしれない」
というだけで、
「がんになるのでは?」
と不安になる人もいるでしょう。
アスベストによる健康リスクは、吸い込んだ量や期間などさまざまな要因に関係します。
一度吸い込んだら必ず病気になるというものではありません。
一方、「少量なら絶対安全」とも一概にはいえません。
過去に仕事などでアスベストを扱っていた、継続的な曝露が疑われるなど心配な事情がある場合は、職歴や作業内容を整理したうえで医療機関や公的な相談窓口へ相談するとよいでしょう。
アスベストは触っただけでも危険?
アスベストで特に問題になるのは、飛散した繊維を吸入することです。
そのため、
「アスベストが含まれた建材が存在する」
ことと、
「アスベスト繊維が大量に空気中へ飛散している」
ことは分けて考える必要があります。
アスベストを含む建材でも、材料の中に固く固定され、破損していなければ飛散しにくいものがあります。
一方、
- 削る
- 切断する
- 穴を開ける
- 砕く
- 解体する
などの作業を行うと繊維が飛散する可能性があります。
そのためDIYによる安易な解体には注意が必要です。
古い家にはアスベストが使われている?
古い建物では、アスベストを含む建材が使用されている可能性があります。
過去には、
- 吹付け材
- 保温材
- 断熱材
- 耐火被覆材
- スレート
- 屋根材
- 外壁材
- 内装材
- 床材
など、さまざまな建材にアスベストが利用されてきました。
ただし、
「古い家=必ずアスベストがある」
という意味ではありません。
建築年代や使用されている建材によって異なります。
また見た目だけでアスベスト含有の有無を正確に判断することは困難です。
築何年の家なら注意すべき?
「築30年以上ならアスベスト?」
など、建築年だけで判断したくなりますが、注意が必要です。
日本ではアスベスト規制が段階的に強化されてきたため、
「○年以前の建物なら全部アスベスト入り」
と単純には判断できません。
建物の建築時期だけでなく、
- 使用された建材
- 改修履歴
- 建材の製造時期
- 製品名
なども関係します。
古い建物を解体・改修する場合には、専門家による事前調査が重要になります。
2006年にアスベストは原則禁止に
日本ではアスベスト規制が段階的に強化され、2006年9月から石綿を一定量を超えて含有する製品について製造・輸入・譲渡・提供・使用が原則禁止されました。
その後も規制が強化され、現在は石綿を0.1重量%を超えて含有する製品の製造などが禁止されています。
ただし問題なのは、禁止前に建てられた建築物が現在も多数存在することです。
新たにアスベストを使わなくなっても、昔使用された建材は建物の中に残っています。
そのため現在は、新築工事よりも古い建物の解体・改修時の飛散防止が大きな課題となっています。
アスベストが使われている場所は?
建物では、たとえば次のような場所に石綿含有建材が使用されていたことがあります。
天井・鉄骨
耐火や断熱を目的として吹付け石綿などが使用された例があります。
屋根
スレートなどの屋根材に石綿が含まれている製品がありました。
外壁
外壁材やサイディングなどに石綿が含まれているケースがあります。
床
ビニル床タイルなど一部の床材にも使用されていました。
配管周辺
配管やボイラーなどの保温材として使われていた例があります。
つまり、アスベストは「天井に吹き付けられたモコモコした材料」だけではありません。
さまざまな成形板にも含まれていた可能性があります。
吹付けアスベストだけが危険なの?
アスベストと聞くと、天井や鉄骨に吹き付けられた綿状の材料を想像する人が多いでしょう。
吹付け材は飛散性が高く、特に注意が必要です。
一方、アスベストを含む建材は飛散性などによって分類されます。
一般的には、
レベル1:石綿含有吹付け材
レベル2:石綿含有保温材・耐火被覆材・断熱材
レベル3:その他の石綿含有建材
といった区分が知られています。
ただしレベル3だから「安全」という意味ではありません。
切断・破砕などをすれば石綿が飛散する可能性があるため、適切な作業方法が必要です。
アスベストは見た目で分かる?
基本的に、一般の人が見た目だけで正確に判断することは困難です。
同じような外観の建材でも、
- アスベストを含む製品
- アスベストを含まない製品
があります。
建材の商品名や製造時期などから確認できるケースもありますが、それでも判断できない場合は分析調査が必要になります。
「白い繊維が見えるからアスベスト」
「硬い板だからアスベストではない」
と自己判断しないようにしましょう。
家にアスベストがあったらすぐ撤去するべき?
必ずしも「見つけたらすぐ撤去」が最善とは限りません。
アスベスト含有建材が安定した状態で存在し、飛散するおそれが低い場合には、適切に管理する方法が取られることがあります。
むしろ専門知識なしに、
「危険だから自分で剥がそう」
と作業すると、建材を破壊してアスベスト繊維を飛散させる可能性があります。
疑わしい建材を見つけた場合は、触ったり壊したりせず、専門業者などへ相談することが重要です。
DIYリフォームは特に注意
近年は自分で古い住宅をリノベーションするDIYも人気です。
しかし古い住宅では、壁・天井・床・屋根などに石綿含有建材が使われている可能性があります。
特に、
- 電動工具で切る
- グラインダーで削る
- 壁を壊す
- 天井を剥がす
- 床材を剥がす
などの作業では粉じんが発生します。
「マスクをしているから大丈夫」
と自己判断するのも危険です。
古い建材を壊す予定がある場合は、事前にアスベストの可能性を確認しましょう。
解体工事ではアスベストの事前調査が必要
現在は建築物などの解体・改修工事において、石綿含有建材の有無を事前に調査することが求められています。
さらに一定規模以上の工事では、事前調査結果を行政へ報告する制度があります。
そして2023年10月からは、建築物の事前調査について原則として必要な知識を持つ有資格者が行う仕組みとなっています。
つまり、
「見た感じアスベストはなさそうだから解体しよう」
ではなく、工事前に適切な調査を行うことが重要になっています。
アスベスト調査はいくらかかる?
調査費用は建物の大きさや調査対象、分析する検体数などによって異なります。
調査には大きく、
書面調査
↓
現地での目視調査
↓
必要に応じて分析調査
という流れがあります。
設計図書や建材情報などで判断できない場合には、建材の一部を採取して分析することがあります。
費用は条件によって大きく変わるため、複数の専門業者から見積もりを取る方法もあります。
アスベスト除去費用は誰が払う?
住宅の所有者が解体やリフォームを行う場合、アスベスト調査・除去などの費用が工事費に加わることがあります。
費用は、
- アスベストの種類
- 使用場所
- 飛散性
- 建物の規模
- 作業範囲
- 養生方法
などによって大きく異なります。
特に飛散性の高い吹付け石綿などでは、厳重な飛散防止措置が必要になるため費用が高くなる場合があります。
アスベスト除去に補助金はある?
自治体によっては、アスベストの調査や除去などに対する補助制度を設けている場合があります。
ただし、
- 対象となる建物
- 対象となるアスベスト
- 補助率
- 上限額
- 申請時期
などは自治体によって異なります。
また、工事を始めてから申請しても補助対象にならないケースがあります。
アスベスト除去を検討している場合は、工事を契約・開始する前に自治体へ確認するとよいでしょう。
賃貸マンションでアスベストが心配な場合は?
賃貸住宅で、
「天井にアスベストのようなものがある」
「建物が古いので心配」
という場合は、勝手に建材を削ったり採取したりしないでください。
まず、
大家さん・管理会社
へ問い合わせましょう。
建築時の資料や過去の調査記録が残っている場合があります。
必要であれば専門家による調査を検討します。
アスベストとロックウールの違い
アスベストと混同されやすいものに「ロックウール」があります。
ロックウールは鉱物などを原料として人工的に作られる繊維状の材料です。
一方、アスベストは天然に産出する繊維状鉱物です。
| 比較 | アスベスト | ロックウール |
|---|---|---|
| 原料 | 天然の繊維状鉱物 | 鉱物などを加工 |
| 別名 | 石綿 | 岩綿 |
| 現在の使用 | 原則禁止 | 建材などに使用 |
| 主な用途 | 過去に耐火・断熱材など | 断熱・吸音・耐火材など |
「石綿」と「岩綿」は漢字も見た目も似ていますが、別のものです。
ただし古い吹付けロックウールには石綿が混ぜられていた製品もあるため、見た目だけで判断できない場合があります。
アスベストとグラスウールの違い
グラスウールも住宅の断熱材としてよく使われています。
グラスウールはガラスを高温で溶かして繊維状に加工した材料です。
アスベストとは別物です。
現在の住宅でも断熱材として広く利用されています。
つまり、
石綿=アスベスト
岩綿=ロックウール
グラスウール=ガラス繊維
で、それぞれ異なります。
名前が似ているため混同しないようにしましょう。
過去にアスベストを扱っていたらどうすればいい?
過去に、
- 建設業
- 造船業
- 解体業
- 石綿製品製造
- 配管・ボイラー関連
- 自動車整備など一部の作業
に従事し、アスベストを扱っていた可能性がある人もいるでしょう。
心配な場合は、
いつ
どこで
どのような仕事をしていたか
どのくらいの期間だったか
など職歴を整理しておくと、医療機関などへ相談するとき役立ちます。
石綿関連疾患については、労災補償や石綿健康被害救済制度の対象となる場合もあります。
アスベストによる健康被害の救済制度
アスベストによる健康被害については、条件を満たした場合に公的な制度を利用できる可能性があります。
仕事が原因の場合には労災保険による補償が検討されます。
一方、労災補償の対象とならない人についても、「石綿による健康被害の救済に関する法律」に基づく救済制度があります。
対象疾病や認定基準などが定められているため、心当たりがある場合は環境再生保全機構や労働基準監督署などの公的窓口へ相談するとよいでしょう。
アスベストと石綿についてよくある質問
Q. アスベストと石綿は違うもの?
基本的に同じものです。「アスベスト」は英語由来、「石綿」は日本語での名称です。
Q. 石綿は「いしわた」「せきめん」どっち?
どちらの読み方も使われます。
Q. 石綿ならアスベストより安全?
いいえ。同じものなので、名前によって危険性が変わるわけではありません。
Q. アスベストがある建物に入っただけで危険?
建材にアスベストが含まれているだけで直ちに健康被害が起こるわけではありません。特に問題となるのは、繊維が飛散してそれを吸入することです。
Q. 古い家には必ずアスベストがある?
必ずではありません。建築年代や使用された建材によって異なります。
Q. 見た目でアスベストを判断できる?
一般の人が見た目だけで正確に判断するのは困難です。必要に応じて専門的な調査・分析を行います。
Q. 自分でアスベストを撤去していい?
疑わしい建材を自己判断で壊したり削ったりするのは避けましょう。飛散させる可能性があるため、専門家へ相談することが重要です。
まとめ|アスベストと石綿は「同じもの」
今回は「アスベストと石綿の違い」について解説しました。
最も重要なポイントは、
アスベスト=石綿
ということです。
「アスベスト」は英語由来の名称、「石綿」は日本語の名称であり、基本的に同じものを指しています。
また、
- アスベストは天然に産出する繊維状鉱物の総称
- 熱や摩擦に強く、過去には建材などへ広く利用された
- 日本では現在、原則として製造・使用などが禁止されている
- 過去に建てられた建物には現在も石綿含有建材が残っている可能性がある
- 問題になるのは非常に細い石綿繊維を吸い込むこと
- 肺がん、中皮腫、石綿肺などとの関連が知られている
- 古い住宅だからといって必ずアスベストが使われているとは限らない
- 見た目だけで石綿含有の有無を判断することは難しい
- 建材を切る・削る・壊すことで飛散する可能性がある
- DIYで安易に古い建材を解体しない
- 解体・改修工事では石綿の事前調査が重要
- 石綿と岩綿(ロックウール)は別物
という点も覚えておきましょう。
特に古い住宅のリフォームや解体を予定している人にとって重要なのは、
「アスベストがあるかもしれないから、とりあえず剥がして確認してみよう」
と考えないことです。
石綿含有建材は、安定した状態では飛散しにくいものでも、切断・破砕することで繊維が空気中へ飛散する可能性があります。
古い天井や壁、床材、屋根材などを壊す予定がある場合は、作業を始める前に建築年代や建材を確認し、必要に応じて専門家へ相談しましょう。
アスベストと石綿の「名前の違い」を知ること以上に、「壊す前に確認する」ことが大切です。


