「カスハラと普通のクレームは何が違うの?」
「店員に苦情を言っただけでもカスハラになる?」
カスタマーハラスメント、いわゆる「カスハラ」が社会問題になるなか、このような疑問を持つ人も多いのではないでしょうか。
結論からいうと、商品やサービスに問題があり、改善や説明を求める正当なクレームと、相手に対して暴言を吐いたり過剰な要求を繰り返したりするカスハラは同じではありません。
ポイントになるのは、「苦情を言ったかどうか」だけではなく、要求内容に妥当性があるか、要求するための手段や態様が社会通念上相当かという点です。
この記事では、カスハラとクレームの違いや、どこからがカスハラになるのかを具体例を交えながらわかりやすく解説します。
カスハラとクレームの違い
まずは、両者の違いを簡単に比較してみましょう。
| 比較項目 | クレーム | カスハラ |
|---|---|---|
| 主な意味 | 商品・サービスなどへの苦情や改善要求 | 顧客等による著しい迷惑行為・ハラスメント |
| 要求内容 | 正当・合理的な場合がある | 不当・過剰な要求などが含まれる |
| 言い方・行動 | 冷静な指摘や説明要求など | 暴言、脅迫、威圧、長時間拘束など |
| 目的 | 問題解決・改善など | 過剰な謝罪や補償の強要などに発展することがある |
| 企業側の対応 | 内容を確認して適切に対応 | 従業員を守るため毅然とした対応が必要になる場合がある |
つまり、クレーム=カスハラではありません。
商品やサービスに問題があれば、消費者が事業者に対して説明や改善を求めること自体は不自然なことではありません。
一方、要求の内容や伝え方が行き過ぎて、従業員の就業環境を害するような行為になると、カスハラに該当する可能性があります。
そもそもクレームとは?
一般的にクレームとは、顧客が商品やサービスなどについて不満を伝えたり、改善や対応を求めたりすることを指します。
例えば、
「注文した商品と違うものが届いたので交換してほしい」
「請求金額が間違っているので確認してほしい」
「予約した内容と違うので説明してほしい」
といった申し出です。
このようなケースでは、顧客側に合理的な理由があります。
もちろん、企業側が調査した結果、顧客の勘違いだったと判明することもあります。
それでも、苦情や問い合わせをしたという事実だけでカスハラになるわけではありません。
企業にとってクレームは、商品やサービスの問題点を発見し、改善するきっかけになる場合もあります。
カスハラとは?
カスハラは「カスタマーハラスメント」の略称です。
顧客や取引先、施設利用者などが、従業員に対して社会通念上許容される範囲を超えた要求や言動をすることなどを指します。
代表的なものとしては、
- 大声で怒鳴る
- 従業員を侮辱する
- 「クビにしろ」などと過剰な要求をする
- 土下座を要求する
- 長時間にわたって拘束する
- 同じ内容のクレームを何度も繰り返す
- SNSに個人情報をさらすと脅す
- 暴力を振るう
- 性的な発言や行為をする
- 正当な理由なく金品や特別待遇を要求する
などが考えられます。
ただし、特定の言葉を一度使っただけで機械的にカスハラと決まるものではなく、要求内容や言動、回数、時間、状況などを踏まえて判断する必要があります。
一番の違いは「要求内容」と「要求の仕方」
カスハラとクレームの境界線を考えるとき、重要になるのが、
「何を要求しているのか」
そして、
「どのような方法で要求しているのか」
という2つのポイントです。
正当な要求でも伝え方が問題になる場合がある
例えば、購入した商品が壊れていたとします。
「購入したばかりなのに動かないので、交換できますか?」
と冷静に伝えるのであれば、一般的なクレームの範囲と考えやすいでしょう。
ところが、
「今すぐ店長を呼べ!」
「こんな店は潰してやる!」
などと従業員を威圧し続ければ、商品の不具合について申し出ること自体に理由があったとしても、要求する際の言動がカスハラに該当する可能性があります。
つまり、「要求内容が正しいなら何を言ってもいい」というわけではありません。
どこからがカスハラ?具体例で比較
カスハラとクレームの違いを具体例で見てみましょう。
商品が壊れていた場合
通常のクレーム
「昨日購入した商品が動かないのですが、交換してもらえますか?」
→商品の不具合について合理的な対応を求めています。
カスハラになる可能性があるケース
「交換だけじゃ納得できない。迷惑料として10万円払え!」
→商品の価格や損害などに比べ、著しく過剰な金銭を要求している場合は問題になる可能性があります。
店員の対応が悪かった場合
通常のクレーム
「先ほどの店員さんの対応が気になったので、改善してもらえませんか?」
→接客について意見や改善を求めています。
カスハラになる可能性があるケース
「今すぐ本人をここに呼んで土下座させろ!」
→謝罪方法について過剰な要求をしています。
長時間クレームを続ける場合
最初は正当なクレームだったとしても、企業側が十分な説明や対応をした後も、
「納得できない」
「責任者を出せ」
などと何時間も同じ要求を繰り返せば、長時間拘束などのカスハラに該当する可能性があります。
このように、最初は正当なクレームでも、途中からカスハラになる場合があるのがポイントです。
「怒る=カスハラ」ではない
注意したいのが、
「怒っているお客さん=カスハラ」ではない
という点です。
例えば、大切な予約が店側のミスでキャンセルされていた場合など、顧客が強い不満を示すこと自体には理由があるでしょう。
声が多少大きくなったからといって、それだけで直ちにカスハラと判断できるわけではありません。
重要なのは、怒っているかどうかではなく、
「暴言や脅迫があるか」
「過剰な要求をしていないか」
「長時間拘束していないか」
などを含め、言動全体を見ることです。
正当なクレームまでカスハラ扱いされる?
カスハラ対策が広がることで、
「企業に少しでも苦情を言ったらカスハラ扱いされるのでは?」
と心配する人もいるかもしれません。
しかし、正当な意見や要望まで一律にカスハラと扱うものではありません。
商品に欠陥があったり、サービス内容に問題があったりした場合に、消費者が説明や改善を求めることはあります。
大切なのは、相手を一人の人間として尊重しながら、問題点と希望する対応を冷静に伝えることです。
例えば、
「○月○日に購入した商品が壊れていました。交換または返金は可能でしょうか?」
というように、事実と希望を分けて伝えると問題解決につながりやすくなります。
カスハラは法律で禁止されている?
カスハラをめぐる制度は近年大きく変化しています。
2025年には改正労働施策総合推進法が成立し、事業主にカスタマーハラスメント防止のための雇用管理上の措置を求める仕組みが設けられました。
また、東京都では2025年4月1日に「東京都カスタマー・ハラスメント防止条例」が施行されるなど、自治体による取り組みも進んでいます。
カスハラという行為すべてが一律に同じ犯罪になるわけではありませんが、具体的な行為によっては、暴行、脅迫、強要、名誉毀損、業務妨害などに関する刑事上の問題や、民事上の責任が生じる可能性があります。
そのため、「客だから何を言っても許される」という考え方は通用しません。
企業側はクレームとカスハラをどう見分ける?
企業側にとって難しいのは、正当なクレームとカスハラを適切に区別することです。
顧客が怒っているという理由だけで対応を打ち切れば、本来対応すべき問題を見逃してしまう可能性があります。
一方、従業員が暴言や威圧的な言動を長時間受け続ける状況を放置することも適切ではありません。
そのため、
要求に理由があるか
↓
要求内容は妥当か
↓
要求する方法や態様は社会通念上相当か
という視点で整理するとわかりやすいでしょう。
企業側には、顧客への適切な対応と従業員を守るための対策の両方が求められます。
カスハラとクレームに関するよくある質問
店員に文句を言ったらカスハラになりますか?
単に不満や苦情を伝えただけで、直ちにカスハラになるわけではありません。
商品やサービスの問題について合理的な説明や対応を求めることは、通常のクレームの範囲内と考えられます。
ただし、暴言や脅迫、過剰な要求などを伴うとカスハラになる可能性があります。
「責任者を出して」はカスハラですか?
「責任者から説明を受けたい」と合理的な理由で求めること自体が、直ちにカスハラになるわけではありません。
しかし、必要性がないのに責任者を呼ぶことを何度も強要したり、責任者に対して暴言を吐いたりすれば、カスハラと判断される可能性があります。
土下座を要求するとカスハラですか?
土下座の要求は、カスハラの典型的な問題行為として挙げられることがあります。
謝罪を求めることと、特定の謝罪方法を強要することは分けて考える必要があります。
SNSに投稿すると言うのはカスハラ?
「対応しないなら実名と顔写真をSNSでさらす」などと従業員を威圧し、要求を通そうとする行為はカスハラに該当する可能性があります。
内容によっては、カスハラ以外の法的問題が生じる可能性もあるため注意が必要です。
まとめ
カスハラとクレームは、同じものではありません。
簡単に整理すると、
クレーム
=商品やサービスなどへの不満、苦情、改善要求
カスハラ
=顧客等による要求や言動のうち、内容や手段・態様が社会通念上許容される範囲を超え、従業員の就業環境を害するもの
と考えると違いがわかりやすくなります。
特に重要なのは、「クレームを言ったかどうか」だけで判断しないことです。
商品に問題があれば、交換や返金、説明などを求めること自体には合理性があります。
一方で、正当なクレームから始まったとしても、暴言、脅迫、土下座の強要、過剰な金銭要求、長時間の拘束などに発展すれば、カスハラになる可能性があります。
そのため、カスハラとクレームの境界線を考えるときは、**「要求内容に妥当性があるか」と「要求する方法が社会通念上相当か」**の両方を見ることが重要です。

