業務上過失致死と過失致死の違いは?刑罰や具体例をわかりやすく解説

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ニュースを見ていると、「業務上過失致死の疑い」「過失致死の疑い」といった言葉が出てくることがあります。

どちらも、故意ではないものの不注意によって人を死亡させてしまった場合に問題となる犯罪です。

では、業務上過失致死と過失致死にはどのような違いがあるのでしょうか?

簡単にいうと、大きな違いは**「業務上必要な注意を怠ったのか、それ以外の通常の過失なのか」**という点です。

また、刑法上の刑罰にも違いがあります。

この記事では、業務上過失致死と過失致死の違いを、具体例を交えながらわかりやすく解説します。

※本記事は一般的な法律情報をわかりやすく説明したものであり、個別事件について法的判断を行うものではありません。

業務上過失致死と過失致死の違いを簡単に比較

まずは大まかな違いを確認してみましょう。

項目 業務上過失致死 過失致死
大きな違い 業務上必要な注意を怠って人を死亡させる 通常の過失によって人を死亡させる
関連する刑法の規定 刑法211条 刑法210条
「業務」が関係するか 関係する 必ずしも関係しない
刑罰 5年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金 50万円以下の罰金
具体的な判断 業務性・注意義務・因果関係などを個別に判断 過失・因果関係などを個別に判断

※2025年6月1日から、従来の「懲役」「禁錮」は「拘禁刑」に一本化されています。

つまり、業務上過失致死のほうが法定刑が重く設定されています。

なぜなら、一定の業務に継続して携わる人には、その業務に伴う危険を防止するため、より慎重な注意が求められると考えられているためです。

過失致死とは?

過失致死とは、必要な注意を怠った結果、故意ではなく人を死亡させてしまった場合に成立し得る犯罪です。

刑法210条では過失致死について規定されています。

ポイントは、最初から相手を死亡させるつもりだったわけではないということです。

例えば、重大な不注意によって事故を起こし、その結果として人が死亡してしまった場合などが考えられます。

ただし、

「事故が起きた=必ず過失致死罪になる」

というわけではありません。

実際には、どのような注意義務があったのか、その義務に違反していたのか、死亡という結果との間に因果関係があるのかなどが検討されます。

業務上過失致死とは?

業務上過失致死とは、簡単にいうと、業務上必要な注意を怠ったことによって人を死亡させてしまった場合に成立し得る犯罪です。

刑法211条には、業務上必要な注意を怠り、それによって人を死傷させた場合について規定があります。

例えば、仕事などで危険を伴う機械や設備を扱っている人には、安全確認や適切な操作などが求められます。

そこで必要な確認を怠り、それが原因となって死亡事故が発生した場合には、業務上過失致死が問題になる可能性があります。

ニュースでは、

「安全管理を怠ったとして業務上過失致死の疑い」

「事故について業務上過失致死容疑で捜査」

といった表現が使われることがあります。

「業務上」の業務は会社の仕事だけではない

ここが非常に間違えやすいポイントです。

「業務上過失致死」と聞くと、

会社員が仕事中に起こした事故

だけを想像する人もいるでしょう。

しかし、刑法上の「業務」は、単純に「会社から給料をもらって行う仕事」という意味だけではありません。

一般的には、社会生活上の地位に基づき、反復・継続して行う行為で、人の生命・身体に危害を加えるおそれのあるものなどが「業務」に当たり得ると考えられています。

そのため、

「お金をもらっていないから業務ではない」

「会社員ではないから業務上過失致死にはならない」

と単純に判断することはできません。

実際に「業務」に当たるかどうかは、その行為の性質や継続性などを踏まえて判断されます。

なぜ業務上過失致死のほうが刑罰が重い?

過失致死罪の法定刑は50万円以下の罰金です。

一方、業務上過失致死傷罪について刑法211条では、5年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金とされています。

かなり大きな違いがあります。

業務として一定の行為を繰り返している人は、その行為について知識や経験を持ち、危険を回避するためにより慎重な注意を払うことが期待されます。

そのような立場にありながら必要な注意を怠り、人を死亡させた場合には、通常の過失より重い責任を問う仕組みになっているわけです。

業務上過失致死になる具体例は?

どの犯罪が成立するかは個別の事情によって異なりますが、業務上過失致死が問題となり得る場面としては、例えば次のようなものがあります。

工事現場での事故

工事現場で必要な安全対策を怠り、資材などが落下して作業員や通行人が死亡したケースです。

現場責任者などにどのような安全管理上の義務があったのかが問題となる可能性があります。

工場での事故

危険な機械について必要な点検を行わなかったり、安全管理を怠ったりした結果、死亡事故が発生したケースです。

設備の管理責任や事故を予見できたかどうかなどが検討されます。

店舗や施設での事故

施設管理者が危険な設備を放置するなどして事故が発生し、利用者が死亡した場合にも、状況によって業務上過失致死が問題となることがあります。

ただし、事故が起きただけで責任者が自動的に罪に問われるわけではありません。

誰にどのような注意義務があったのかが重要になります。

医療事故でも業務上過失致死になる?

医療事故についても、患者が死亡したからといって直ちに業務上過失致死罪が成立するわけではありません。

医療行為には一定のリスクが伴います。

そのため、結果だけではなく、

  • 医療従事者にどのような注意義務があったのか
  • 医療水準に照らして適切な処置だったか
  • 注意義務違反があったか
  • その行為と死亡との因果関係が認められるか

などが重要になります。

結果的に患者が亡くなったとしても、適切な医療行為が行われていたのであれば、それだけを理由に犯罪になるわけではありません。

交通事故は業務上過失致死になる?

ここもニュースを見る際に注意したいポイントです。

以前は自動車による死亡事故について「業務上過失致死」という言葉が使われるケースがありました。

しかし現在、自動車の運転によって人を死傷させたケースについては、自動車運転死傷処罰法が重要になります。

例えば、必要な注意を怠って交通事故を起こし、人を死亡させた場合には「過失運転致死」などが問題になることがあります。

そのため、

「仕事中に車で死亡事故を起こした=業務上過失致死」

と単純に考えるのは正確ではありません。

職業ドライバーであっても、自動車運転による死傷事故では自動車運転死傷処罰法が適用されるケースがあります。

「過失」と「故意」の違いも重要

業務上過失致死と過失致死を理解するときは、「過失」と「故意」の違いも知っておくとわかりやすくなります。

簡単に整理すると、

故意:結果が発生することを認識・認容して行為する

過失:必要な注意を怠ったために結果を発生させる

という違いがあります。

例えば、人を殺す意思をもって行為し死亡させた場合には、過失致死ではなく殺人罪が問題になります。

一方、殺す意思はなかったものの、必要な注意を怠ったことで死亡事故を起こした場合には、過失犯に関する犯罪が問題となる可能性があります。

業務中の事故なら必ず業務上過失致死になる?

なりません。

仕事中に死亡事故が発生したからといって、責任者や従業員が自動的に業務上過失致死罪に問われるわけではありません。

犯罪の成立を判断する際には、

  • その行為が刑法上の「業務」に該当するか
  • 本人に注意義務があったか
  • 注意義務に違反したか
  • 結果を予見・回避できたか
  • 注意義務違反と死亡との因果関係があるか

など、さまざまな事情が検討されます。

事故の規模が大きいからといって必ず刑事責任が成立するわけでもありません。

業務上過失「致死」と「致傷」の違い

ニュースでは「業務上過失致死傷」という言葉もよく登場します。

「致死」と「致傷」の違いは、発生した結果です。

致死=被害者が死亡した場合

致傷=被害者が負傷した場合

例えば、業務上必要な注意を怠ったことで事故が起こり、被害者がケガをした場合には業務上過失傷害が問題となります。

被害者が死亡した場合には業務上過失致死が問題になります。

「致死傷」は、この両方をまとめた表現です。

重過失致死という犯罪もある

刑法211条には「重過失」によって人を死傷させた場合についても規定されています。

重過失とは、一般的な過失よりも注意義務違反の程度が著しいケースを指します。

そのため、

通常の過失 → 過失致死

業務上必要な注意を怠る → 業務上過失致死

重大な過失 → 重過失致死

といった違いがあります。

ただし、実際にどれに該当するかは事故の状況や本人の立場、求められていた注意義務などによって判断されます。

ニュースの「業務上過失致死の疑い」は有罪という意味ではない

ニュースを見ると、

「業務上過失致死の疑いで書類送検」

「業務上過失致死容疑で捜査」

などと報道されることがあります。

ここで注意したいのは、「疑い」「容疑」と報道されている段階で犯罪が確定したわけではないということです。

捜査機関による捜査、その後の検察による処分、起訴された場合には裁判などを経て刑事責任が判断されます。

「書類送検された=有罪になった」という意味でもありません。

ニュース記事を読む際には、この点を区別しておくことが大切です。

まとめ|業務上過失致死と過失致死は「業務上の注意義務」が大きな違い

業務上過失致死と過失致死は、どちらも故意ではなく、不注意によって人を死亡させてしまった場合に問題となる犯罪です。

大きな違いを簡単にまとめると、

過失致死=通常の過失によって人を死亡させた場合

業務上過失致死=業務上必要な注意を怠って人を死亡させた場合

となります。

刑法上の法定刑にも違いがあり、過失致死罪が50万円以下の罰金であるのに対し、業務上過失致死については5年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金と、より重く設定されています。

また、「業務」とは必ずしも会社員の仕事だけを意味するわけではありません。

さらに、自動車による死傷事故については自動車運転死傷処罰法が適用されるケースがあるなど、事故の種類によって適用される法律も変わります。

ニュースで「業務上過失致死」という言葉を見かけたときは、**「仕事中だったか」だけではなく、「どのような業務上の注意義務があり、それを怠った疑いがあるのか」**に注目すると、事件の内容を理解しやすくなるでしょう。

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