ニュースや事故の報道で「酸欠状態」「窒息した」といった言葉を耳にすることがあります。
どちらも「酸素が足りない」というイメージがありますが、
「酸欠と窒息は何が違うの?」
「酸欠になると窒息する?」
「息ができるのに酸欠になることはある?」
など、違いが分かりにくいですよね。
簡単にいうと、酸欠(酸素欠乏)は周囲の空気などに含まれる酸素が不足している状態を指すことが多く、窒息は体に必要な酸素を取り込めず、組織が酸素不足に陥る状態を指します。
つまり、酸欠は窒息を引き起こす原因の一つになり得ます。
この記事では「酸欠」と「窒息」の違いについて、原因や症状、どのような場所で起こりやすいのかまで分かりやすく解説します。
酸欠と窒息の違い
まず、大まかな違いを比較してみましょう。
| 酸欠(酸素欠乏) | 窒息 | |
|---|---|---|
| 主な意味 | 空気中などの酸素が不足した状態 | 体に必要な酸素を取り込めない状態 |
| 原因 | 酸素濃度の低下など | 気道閉塞、溺水、酸素不足の環境など |
| 呼吸 | 呼吸できても起こり得る | 正常な酸素供給ができない |
| 起こる場所・場面 | タンク、ピット、地下空間など | 食べ物を詰まらせる、首の圧迫、溺水などさまざま |
| 関係 | 窒息の原因になることがある | 酸欠によって起こる場合もある |
ポイントは、「息をしているかどうか」だけでは判断できないことです。
酸素濃度が低い場所では、本人が呼吸していても体に十分な酸素を取り込めません。
酸欠とは?
一般的に「酸欠」と呼ばれているものは、酸素が不足した状態のことです。
特に労働安全衛生の分野では、空気中の酸素濃度が18%未満の状態を「酸素欠乏」と定義しています。
通常の空気には約21%の酸素が含まれています。
そのため、
「21%から18%なら、たった3%しか違わない」
と思うかもしれません。
しかし、酸素濃度の低下は人体に大きな影響を与える可能性があります。
さらに酸素濃度が低くなると、判断力の低下や意識障害などが起こり、生命に関わる危険な状態になることがあります。
窒息とは?
窒息は、何らかの原因によって体に必要な酸素を十分に取り込めなくなった状態です。
「窒息=喉に物が詰まること」と思われがちですが、それだけではありません。
窒息につながる原因には、
・食べ物や異物による気道閉塞
・水中での溺水
・首などへの圧迫
・酸素濃度の低い環境
・煙やガスなどによる呼吸への影響
など、さまざまなものがあります。
つまり、窒息は「酸素が体に届かない」という結果を表す、より広い概念と考えると違いが理解しやすくなります。
酸欠でも呼吸はできる?
ここは酸欠と窒息を理解するうえで重要なポイントです。
酸欠状態でも呼吸そのものができる場合があります。
たとえば、酸素濃度が非常に低い空間に入ったとします。
そこに空気のような気体が存在していれば、
「息を吸う」
「息を吐く」
という動作自体はできます。
しかし、吸い込んでいる気体に十分な酸素が含まれていなければ、体に必要な酸素を取り込むことができません。
そのため、
「呼吸できているから安全」
とは限らないのです。
これが酸欠事故の怖いところです。
酸欠になると窒息する?
酸欠が深刻になると、窒息状態につながる可能性があります。
空気中の酸素が少なくなる
↓
肺から取り込める酸素が減る
↓
血液によって運ばれる酸素が不足する
↓
脳や臓器が酸素不足になる
↓
意識障害などが起こる
という流れです。
したがって、
酸欠=窒息
と完全に同じ意味ではありませんが、
酸欠は窒息を引き起こす原因の一つ
と考えると分かりやすいでしょう。
酸欠はどんな場所で起こりやすい?
酸欠事故は、特に換気されにくい閉鎖的な空間で注意が必要です。
たとえば、
・タンク
・マンホール
・地下ピット
・地下室
・井戸
・サイロ
・船倉
・トンネル
・貯蔵施設
などです。
こうした場所では、酸素が別の気体に置き換わったり、化学反応などによって酸素が消費されたりすることで、酸素濃度が低下する場合があります。
しかも、酸素そのものには色もにおいもありません。
見た目やにおいだけで「ここは酸素が少ない」と気づくことは困難です。
酸欠では突然倒れることもある?
酸素濃度が大きく低下した環境では、短時間で意識を失う危険があります。
特に怖いのは、
「少し息苦しくなったら外に出ればいい」
とは限らないことです。
酸素が極端に少ない場所では、危険を感じて避難する前に判断力や運動能力が低下する可能性があります。
そのため、酸欠の可能性がある場所へ「ちょっと確認しに行く」という行動も危険です。
酸欠の人を助けに行くのも危険?
酸欠事故では、倒れている人を見つけた人が助けに入り、その人まで倒れてしまう「二次災害」に注意が必要です。
たとえばマンホールやタンクの中で人が倒れていた場合、
「早く助けなければ」
と思って中へ入るのは自然な反応です。
しかし、倒れた原因が酸素欠乏だった場合、救助に入った人も同じ環境にさらされます。
適切な呼吸用保護具などがない状態で、酸欠が疑われる閉鎖空間へ入るのは非常に危険です。
自分で救出しようとせず、119番通報などを行い、専門的な救助を求めることが重要です。
窒息は酸欠以外でも起こる
一方、周囲の空気に十分な酸素があっても窒息する場合があります。
分かりやすいのが、食べ物を喉に詰まらせたケースです。
周囲には普通の空気があります。
しかし、異物によって気道がふさがれてしまえば、肺へ空気を送ることができません。
つまり、
周囲の酸素が少ない → 酸欠による窒息
周囲に酸素はあるが気道がふさがる → 気道閉塞による窒息
という違いがあります。
「窒息」という言葉のほうが、原因の範囲が広いわけです。
一酸化炭素中毒は酸欠や窒息とは違う?
火災や暖房器具の事故などで問題になるのが一酸化炭素(CO)です。
一酸化炭素中毒は、単純に「空気中の酸素が少なくなった」という酸欠とは仕組みが異なります。
一酸化炭素は血液中のヘモグロビンと強く結びつき、酸素を体内へ運ぶ働きを妨げます。
その結果、体の組織が酸素不足に陥ります。
そのため、
酸素欠乏=空気中の酸素そのものが不足
一酸化炭素中毒=酸素を体内で運ぶ仕組みが妨げられる
という違いがあります。
どちらも生命に関わる危険がありますが、原因や仕組みは同じではありません。
酸欠・窒息が疑われたらどうする?
酸欠や窒息は緊急性が高い状態です。
意識がない、正常に呼吸していないなどの異常がある場合には、速やかに119番へ通報してください。
特に酸欠が疑われるタンクやマンホール、地下空間などでは、救助しようとして無防備に中へ入らないことが重要です。
また、食べ物などによる気道異物の場合は対応が異なります。
消防庁などが案内している応急手当を参考にしつつ、緊急時には119番通報を行い、通信指令員の指示に従いましょう。
酸欠と窒息の違いを簡単にいうと?
最後に、できるだけ簡単にまとめます。
酸欠(酸素欠乏)
→ 周囲の空気などに酸素が足りない状態。
窒息
→ 何らかの原因によって体が必要な酸素を得られなくなった状態。
したがって、
「酸欠は窒息を起こす原因の一つ」
という関係で覚えると分かりやすいでしょう。
まとめ
酸欠と窒息は似た言葉ですが、厳密には意味が異なります。
酸欠は一般に酸素が不足している状態を指し、労働安全衛生の分野では酸素濃度18%未満が「酸素欠乏」と定義されています。
一方の窒息は、気道閉塞や溺水、酸素不足の環境などによって、体に必要な酸素を十分に取り込めない状態です。
そのため、
酸欠=窒息ではない
ものの、
酸欠によって窒息状態になることはある
という関係になります。
また、酸欠では「息ができているから大丈夫」とは限りません。
特にマンホールやタンク、地下ピットなどの閉鎖空間では、酸素不足に気づかないまま意識を失う危険があります。
酸欠が疑われる場所で人が倒れていても、装備なしで救助に入ることは避け、119番通報などによって専門的な救助を求めることが重要です。


