苦手な相手を「天敵」と表現することがあります。
いくら戦っても勝てず、常に負けてしまうような相手のことを指します。
そこで「天敵」とは何か、その意味や使い方、「宿敵」との違いについて説明しましょう。
天敵とは?
天敵というのは本来、自然界での生物間の関係を指す言葉です。
自然界では生物は捕食・被捕食の関係で共存しています。
特定の生物が命を奪われる原因となる他の生物種を「天敵」と呼びます。
例えば、ネズミを捕食するネコはネズミにとっての天敵です。
食べられる側にとって食べる側が「天敵」となります。
ただし、ここでの「食う」という表現は必ずしも捕食を指すわけではありません。
例えば、寄生虫がホストを死に至らしめる場合も「天敵」と呼ばれます。
天敵の語源と由来
「天敵」の語源は「不倶戴天の敵」(ふぐたいてんのてき)です。
「不倶戴天」は、同じ空の下に存在することをも許さないという強い憎悪を意味します。
したがって、「不倶戴天の敵」はどうしても許せない敵を指します。
この表現は、中国の『礼記(らいき)・典礼上』の「父の讐(あだ)は、与(とも)に共(とも)に天を戴かず」の一節に由来します。
「父を殺した敵とは同じ空の下に存在できない」
つまり「父の仇を討つべきだ」という意味です。
天敵の役割
天敵が存在することで、生態系のバランスが保たれます。
ある生物種が増えすぎると、それを捕食する天敵も増えてその種を抑制します。
逆に天敵が増えすぎると、捕食される側の生物が減少し、結果的に天敵も減るという循環があります。
こうして長期的に生物の個体数バランスが保たれるのです。
農業では、天敵の不在が害虫の大量発生の原因となることがあります。
そのため、害虫防除のために天敵を導入することもあります。
天敵のいない生物
天敵が存在しない生物もいます。
こうした生物は「頂点捕食者」(トッププレデター)と呼ばれ、以下のような動物が含まれます。
・トラ
・ライオン
・ヒョウ
・ジャガー
・ピューマ
・サイ
・ゾウ
・オオカミ
・ヒグマ
・ハヤブサ
・フクロウ
・ワニ
・クジラ
・イルカ
これらの動物に共通するのは、多くが「絶滅危惧種」であることです。
生態系のバランスや環境の変化があった際に、大きな影響を受けやすいのが天敵のいない動物たちです。
天敵と宿敵の違い
「天敵」と「宿敵」は似たような言葉ですが、意味は異なります。
・対抗する相手に勝てないのが「天敵」
・実力が拮抗している相手が「宿敵」
「宿敵」はライバルと言えるでしょう。
「天敵」と「宿敵」の違いのまとめ
以上、「天敵」の意味や使い方、そして「宿敵」との違いについて説明しました。
自然界において「天敵」は生態系を支える重要な要素です。
一方で、人間社会においては「天敵」はできるだけ存在しない方が良いかもしれません。